丈青《I See You While Playing The Piano》

Notes



インタビュアー
柳樂 光隆(ジャズ評論家)

インタビュイー
丈青(ピアニスト・作曲家)

ちなみにジャズに限定すると、丈青さんが一番最初にあこがれたピアニストは誰ですか?
最初に好きになったのは《Round About Midnight》のセロニアス・モンクかな。あと、オスカー・ピーターソンも好きだったな。でも、ジャズを好きになったきっかけは、17年くらい前にNYに行って、ローランド・ハナを見て感動してね。NYでバリバリやっているのが、かっこ良かったのかな。それまでジャズは暗くてダサくてイケてない音楽だと思って、ぴんときてなかったんだよね。
でも、NYのヴィレッジバンガードとかブルーノートの空気感もあったのかな。
好きになってからはCDを買ったりして、どんどんDIGしたから。キリがなく、アイドルもたくさんでてきて。ハービー・ハンコック、ビル・エヴァンス、キース・ジャレットとかね。そのあとはジェームス・ウィリアムス、ケニー・カークランドが好きだったな。
ジェームス・ウィリアムスの曲は以前、J.A.Mでカヴァーをしていましたね。
彼はあんなに素晴らしいのにマニアックな存在でしょ。だから取り上げたんだ。例えば、スティングとやっているジェイソン・リベロっていうピアニストも素晴らしいのに日本では売れないのね。どんどん廃盤になってしまって。だから良いものは残るべきだと思って、プレイしたの。
ジェームスはどんなところが好きなんですか?
すばらしい作曲能力だね。ジャズメンであそこまでいい曲をかける人もなかなかいない。キース(・ジャレット)が言っていたんだけど、あの当時の黒人は4度のコードをガンガン使っていて、みんな同じでつまらないと。それは言い過ぎだと思うけど。ジェームス(・ウィリアムス)は、黒人の当時の人の中では叙情的で、切なさとか、音にこもっているものが違って、全然つまらなくないんだよね。ジェームスの《Meet The Magical Trio》は何度も聴いたな。
ケニー・カークランドの名前も出てきましたが、彼のどのあたりに魅力を感じていますか?ある意味で、モダンジャズの完成形みたいな人ですよね。
スティングとやっていた活動が素晴らしいからね。初めて聴いたときは歌があっても、ここまでやっていいんだってことに驚いたね。しかもスティングがそれを許して、むしろ賞賛していることも衝撃的だった。《Bring On the Night 》は繰り返し聴いたよ。ケニー・ギャレットとやっていた活動でも、サイドマンなんだけど、それ以上の働きをしていてね。自分のアルバムは最後まで嫌がっていた、しぶしぶ出していて。ソロでプレイする力を持っているのにそうしないっていうか、すごく特殊な人で、その立ち位置がかっこよくて。80年代前半の輝いているケニーが好きだね。ロイ・ハーグローヴも言っていたけど、彼はイノヴェーターだよね。
例えば、その後に出てきたブラッド・メルドーはいかがですか?
最近のブラッドはすごくいいよね。俳句とか、水墨画にも通じるイメージ。音数が減衰してきていて、すごくバランスがいい。
ブラッド・メルドーって解体再構築の限界点ってイメージで、ある意味で難解な部分もあるじゃないですか?
難解な要素っていうのは、ハーモニー的なこと?俺はミュージシャンなので、あまりそうは聴こえないけど、確かにそういうところもあるかもしれないね。ボイシングにしても、グラスパーとは全然違うアプローチだよね。ぱっとリスナーに聴かせたときに、難しく聴こえるかもしれない。でも、それは彼の志向だから。
丈青さんは難しく聴こえないように演奏しているイメージがあります。
難しいことをいかに簡単なように聴かせるか、ということが一番のやり方だと思う。複雑に、難しく聴こえさせるのは、好みじゃないかな。簡単に誰でも分かるようにできている方が素敵だと思う。
そういえば、ライブでロバート・グラスパーの曲をやってますよね。
初期のころの〈For The Foundation〉って曲だね。俺がいいと思ったのは、2000年代初頭にクリス・デイブがケニー・ギャレットとやっていたころかな。その頃のNYでのライブ音源が出回っていて、その演奏がすごかったから。当時、こういう音楽が始まったころで、ロイ(・ハーグローヴ)や、デリック(・ホッジ)もいて、いろんな奴がセッションしていたんだよね。自然にヒップホップとジャズが一緒になってきて、アシッドジャズやジャムバンドも通過して、プレイヤーもリスナーもみんな耳がそういう感じになってきていたころだよね。ジャズだけだと難解なパターンも多くてぴんときていない人も多かったんじゃないかな。ロックとかヒップホップがミクスチャーされているサウンドが当たり前の時代で、そのくらい耳が贅沢になってきていたから。
丈青さんは割とサウンドで考えているタイプなんですね。僕としては意外ですね。
能力は大事だけど、それ以外の要素も考えておかないと。プロとしては必要なことだと思う。
自分自身が大きくなって、やりたいことが具現化できるようにね。今、自分がやりたいことを常にやるべきだから。期限があってやらなきゃいけないことも大事だけど、今やりたいことをやって、それで循環していく仕事がベストだと思う。牽引する立場にある人は、そういう視点もないといけないと思うな。
丈青さんは、オマさん(鈴木勲)とかとインストのジャズをやっているイメージだったので、ストイックなジャズのピアニストのイメージでした。
もともと小学3年生くらいの頃にスティービー・ワンダーをカヴァーしていたのが、俺のピアニストとしての始まり。だから最初からブラックミュージックの要素も入ってた。その後Run-D.M.C.が小学5年生くらいかな、世代的にナチュラルに好きになるよね。スティングも小学生の頃から好きだったね。当時は知らなかったけど、後から考えるとブランフォード(・マルサリス)とか、ケニー(・カークランド)とか、黒人が入っていたんだよね。ローリングストーンズも好きだけど、彼らもルーツがブラックミュージックだしね。






プロフィール


柳樂 光隆 (音楽評論家)
ジャズとその周りにある音楽について書いている音楽評論家。島根県出雲出身。現在進行形のジャズ・ガイド・ブック「Jazz The New Chapter」監修者。CDジャーナル、JAZZJapan, intoxicate, ミュージック・マガジンなどに執筆。Otis brownⅢ『The Thought Of You』, Taylor Mcferrin『Early Riser』, Flying Lotus『You’re Dead』ほか、ライナーノーツ多数

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