丈青《I See You While Playing The Piano》

Notes



インタビュアー
柳樂 光隆(ジャズ評論家)

インタビュイー
丈青(ピアニスト・作曲家)

SOIL& “PIMP”SESSIONS(以下、SOIL)やJ.A.Mでの活動をベースに、菊地成孔のDCPRGへの参加(2012年脱退)や様々なコラボ、 そして世界中のフェスでの演奏など、日本のジャズの中でもここまで華々しい道を歩んできた存在も他にいないだろう。 そんな丈青が満を持して自身の名前を冠したソロピアノ・アルバムをリリースした。もともとインタビューの場では 他のメンバーにマイクを譲るような形で多くを語ってこなかった丈青に、 彼のキャリアや彼が考えるピアニズムについてじっくり話を訊くことにした。




丈青さんはSOILやJ.A.Mもあって、他にもいろんなコラボをやっていて、キャリアも長いのに、 自分の名義でアルバムを出したのはこれが初めてなんですよね。
J.A.Mはこれまでに3枚出していて、自分がリーダーではあるけど、自分の名前でやっているわけではないので。 そういうポテンシャルでやっていないからね。 トリオだけど、バンドというか、ESTとかいたころだし、ジャムバンドもいたし、いろんな要素も入れてたからね。 自分の名前で勝負をしようとしたのは、今までにはなかったね。
それにしてもずいぶん時間かかりましたね。
(ソロ・アルバム制作の)話はあったんだけどね。 配信だけならピアノ・トリオで出したりもしているんだけど、 それは先を見据えて今後やろうとしていることへの実験的な試みだったりして、 これまではライブと同じ感じだったんだよね。
僕の中の丈青さんは、我が強い、個性的というイメージでした。どちらかというとバンドより、個のイメージを持っていました。
バンドサウンドが元々好きなんだよね。 特に歌が入っている音楽が好きで。もともと自分のバンドも歌やラップが入っていたから。女性ボーカルが多いけど。
それはどんな音楽だったんですか?
アシッドジャズとかが流行っていたころ。ヒップホップとジャズが一緒になった90年代前半の。 編成的にも多めのバンドをいくつかやっていたね。当時は、インストの音楽には興味がなかったな。 ただ、仕事としてはたくさん話をいただくから、やってはいたけれど。でも、自分がリーダーでやるつもりは全くなかったな。 興味がなかったから。自分でやる場合は歌かラップがいるバンドばかり。 SOILに入ったのが、その後なんだけど、そのイメージが強いのかもしれないね。 J.A.Mでもホセ・ジェイムズが入ったりはするけど、ホセはNYにいて、しょっちゅうはできないから。(J.A.Mは)インストだしね。
僕の中では丈青さんって「ザ・ピアニスト」ってイメージがあったんです。
でも、長年この仕事をやっているうちにピアニズムみたいなものにも向かってきたので、ナチュラルにそうなってきた。 年間250本とか仕事していた時期もあるくらいピアノにずっと向かってるからね。 今でも最高の歌の人と一緒にやるのは大好きなんだ。気持ちいいからね。
でも、そう言われると歌を好きな感じがソロピアノの演奏には出ていますね。伴奏っぽいところもある。
俺はボーカリストが弾いているピアノが大好きだね。 スティービー・ワンダー、ビリー・ジョエル、シャーリー・ホーンとか、そういう人のバッキングって最高。 ピアニストの伴奏よりも、すごいところに入ってきたりするわけ。 でも、ピアニストはそのバッキングをしなきゃいけないの、ほんとは。それはラッシェル・フェレルとやった時に気付いたんだ。 フェスで南アフリカに行った時に、ラッシェルと仲良くなって、ホテルのラウンジで2人で一台のピアノに座って演奏したんだ。 その時に彼女が歌いながらやっていて、同じピアノを弾いているとグルーヴも入ってくるし、何が必要かもすぐ解った。 ボーカリストの呼吸とかグルーヴとかが理解できて、すごく楽しくセッションできた。
それってとても音楽的なことで、これもピアニズムなんだよね。 ナット・キング・コールもピアニストだから、バッキングの時点で、ものすごいわけ。 もちろん、オスカー・ピーターソンとか、キース・ジャレットも大好きだけど、俺はピアノっていう楽器のいいところは全部好きなんだ。 だから、バッキングしているようなスタイルが出てしまうのもある意味、自分のスタイルかもしれないね。
丈青さんを語るときに「歌」がキーワードになるのは面白いですね。
そもそも「歌心」みたいなものはとても大切にしているので。根源的なものだから。 ピアノを歌のようにイメージ通りに弾ければいいと思う。これができれば、それ以上のスキルは必要ないし、あったところで無意味だよね。 その点では、無駄なプレイは一瞬でも要らないなって思っている。 キースはあれだけ弾くし、あれだけのテクニックを持っているけど、彼の音楽にとっては必要だから弾いているわけで、彼は不要なことはしていない。 (セロニアス・)モンクはあれだけでいいから、それ以上は弾かないしね。 音数だけ見たら違うけれど、それぞれにとって必要なだけ弾いているのが美しさなんだよね。






プロフィール


柳樂 光隆 (音楽評論家)
ジャズとその周りにある音楽について書いている音楽評論家。島根県出雲出身。現在進行形のジャズ・ガイド・ブック「Jazz The New Chapter」監修者。CDジャーナル、JAZZJapan, intoxicate, ミュージック・マガジンなどに執筆。Otis brownⅢ『The Thought Of You』, Taylor Mcferrin『Early Riser』, Flying Lotus『You’re Dead』ほか、ライナーノーツ多数

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